メモアプリ比較

ObsidianにiPhoneから入れる4ルート
公式共有シートで足りるか、足りないか

2026年7月末、Obsidianのモバイル1.13に公式の共有シート対応が追加されました。「もう外部アプリは要らないのでは?」——その疑問に正面から答えます。先に結論の半分を言うと、テキストを共有シートからVaultへ送るだけなら公式で足ります。このページは、残り半分(速度・Apple Watch・音声・自動タグ)が必要な人のための誠実比較です。

前提: 4つのルートはどれも「正解」になり得る

iPhoneからObsidianのVaultにメモを入れる主なルートは4つあります。①公式1.13の共有シート(他アプリの「共有」からVaultのノートへ送る)、②ショートカット(モバイル1.11以降の公式アクションはアプリを開かず追記でき、旧来の obsidian:// URLスキームはObsidianを前面に起動する)、③QuickAddなどのコミュニティプラグイン(Vault内のテンプレート挿入・追記先制御が最強)、④Obsidian連携シンプルメモ(0.4秒起動の専用アプリからメールとVaultの両方へ)。どれが正解かは「何を・どこから・どんな状況で」キャプチャするかで決まります。

比較表: 4ルートの得意・不得意

項目公式共有シート(1.13)ショートカットQuickAddシンプルメモ
追加アプリ / プラグイン不要(無料)不要(iOS標準)プラグイン導入・設定が必要アプリのインストールが必要
得意な起点他アプリからの「共有」(URL・選択テキスト)オートメーション・定型処理Obsidianを開いて使う作業中「思いついた瞬間」のゼロからの入力
思いつきメモの速さ共有元アプリを開いてから共有シートを辿るショートカット起動+入力プロンプトObsidianの起動を待つ(Vault規模で変動)起動0.4秒(実測・ウォーム)→ 即入力
Apple Watch単独不可(watchOSアプリなし)Vault不在のため実質不可不可手首から音声で完結(iPhone中継で追記)
音声入力iOSキーボード音声入力に依存Siri経由で一部可iOSキーボード音声入力に依存開いたら自動録音・オンデバイス変換
タグ・タイトル付与手動手動(テンプレで一部自動)テンプレートで強力に制御オンデバイスAIが自動付与(本文は外部送信なし)
オフライン時ローカル保存で動作アクションによるローカル保存で動作Outboxに暗号化保存→自動再送
Vault以外への控えなしなし(組めば可)なしメール受信箱にも同時に残る(二重化)
失敗モード共有先ノートの選び間違いURLスキーム経由は本文切れ・二重作成・別Vault書込みが起きやすいプラグイン更新で壊れることがあるメール経由が不要な人には過剰
料金無料無料無料(プラグイン)無料3通/日・無制限は¥500/月

シンプルメモの起動0.4秒は、タップ→キーボード入力可能までのウォーム起動・5回計測の中央値(2026-08-11実測・計測方法を公開)。ショートカットの失敗モードは症状別トラブルシューティングに詳述。

シンプルメモが負けるところ(正直に)

  • Safariの記事URLや他アプリからの「共有」起点は公式共有シートの勝ちです。シンプルメモは共有シート拡張を持たないアプリ起動型なので、「見ているものを送る」用途では公式が自然です。
  • 追加アプリ不要・完全無料という点で公式・ショートカットに負けます。シンプルメモの無料プランは3通/日で、無制限にはPremium(¥500/月・¥5,000/年)が必要です。
  • Vault内での挿入位置制御・テンプレート展開はQuickAddが圧倒的に強く、シンプルメモは「決めたノートへの追記」しかできません。
  • メールを介さない完全ローカル運用を求める人には向きません。シンプルメモはメール送信が本体で、E2EE(エンドツーエンド暗号化)ではありません(データの通り道はこちらで全公開)。
  • すでにObsidianを1日中開いて暮らしている人には、外部アプリを足す理由自体が薄いはずです。それは健全な結論です。

それでもシンプルメモを使う理由が残る4場面

  • 1 「思いついた瞬間」のゼロ入力 — 共有シートには共有元が必要
    共有シートは「何かを見ている」ときの道具です。歩いていて頭に浮かんだ一言には共有元がありません。シンプルメモはタップから0.4秒(ウォーム起動・実測中央値)でキーボードが出て、書いて1タップで送信。Obsidianの起動もノート選択も待ちません。
  • 2 Apple Watchから手首だけで完結 — ObsidianはwatchOSアプリを出していない
    ObsidianにはwatchOSアプリが存在しないため、Watch上にはアプリもVaultも共有シートもありません。これは設定ではなく構造の問題です(詳しい解説)。シンプルメモはWatch単独で音声メモを取り、ペアのiPhone経由でメールとVaultの両方に届けます。
  • 3 音声とAIタグの自動化 — 「開く→話す→終わり」
    開いたら自動で録音が始まり、オンデバイスで文字起こし。さらにオンデバイスAI(Apple Foundation Models)が20文字以内のタイトル・1〜3個のタグ・種別(todo/idea/log)を自動付与します。タグ付けのためにメモ本文が外部サーバーへ送られることはありません。タグ付きのままVaultに追記されるので、後の整理が要りません。
  • 4 メール受信箱への二重化 — Vaultが壊れてもメモは残る
    送ったメモはVaultへの追記と同時に自分のメール受信箱にも残ります。Vaultの同期事故・スマホの紛失があっても、メールというアプリ非依存の場所に原本が残る安心感は、公式ルートにはないものです。

どれを選ぶべきか

公式共有シート / ショートカット / QuickAdd向き
  • 共有したいのは主にURL・記事・選択テキスト
  • 追加アプリを一切増やしたくない
  • Vault内の挿入位置やテンプレートを細かく制御したい(QuickAdd)
  • メールを介す設計に抵抗がある
  • Obsidianを常に開いて作業している
Obsidian連携シンプルメモ向き
  • 歩行中・移動中の「思いつき」を最速で残したい
  • Apple Watchだけでメモを完結させたい
  • 声で書きたい(自動録音・オンデバイス変換)
  • タイトル・タグ付けを自動化したい
  • Vaultとメールの両方に残る二重化が欲しい

併用が最も現実的です。「見ているものを送る」は公式共有シート、「頭に浮かんだものを送る」はシンプルメモ、「Vault内の定型作業」はQuickAdd——起点が違う道具は競合しません。

よくある質問

Obsidian公式1.13の共有シートがあれば、シンプルメモは不要では?

共有シートからテキストやURLをVaultへ送るだけなら不要です。シンプルメモが価値を持つのは、共有元のない「思いつき」を0.4秒起動で書き始めたいとき、Apple Watch単独で完結させたいとき、音声の自動録音・AIタグ付与・メールへの二重化が欲しいときです。該当しなければ公式で十分です。

ショートカットの公式アクションとURLスキームはどう違いますか?

モバイル1.11以降の公式ショートカットアクションはObsidianを開かずに追記できます。旧来の obsidian:// URLスキームは必ずObsidianを前面に起動し、本文切れ・ノート二重作成・別Vaultへの書き込みなどの失敗が起きやすい経路です。症状別の切り分けガイドにまとめています。

シンプルメモのVault追記にプラグインは必要ですか?

不要です。Vaultフォルダへのファイル直接追記を基本とし、開けない場合はURIフォールバックで追記します。QuickAddのようなVault内テンプレート制御はできない代わりに、Obsidian側の設定はゼロです。仕組みはObsidian連携の解説ページをご覧ください。

メモの本文はどこかのサーバーに保存されますか?

恒常的な保存はされません。本文は送信の通過時のみサーバーを経由し、AIタグ付けはオンデバイス(Apple Foundation Models)で行われるため外部サーバーへ送られません。ただしメール配送は標準SMTPを使うためE2EE(エンドツーエンド暗号化)ではありません。プライバシー設計の全体像で通り道を図解しています。

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参考文献